「光で書く 撮影監督ストラーロ」 (ビデオ評)
「SD」1995年01月号, p.173
出版社:鹿島出版会
撮影監督ヴィットリオ・ストラーロについてのドキュメンタリー映像「光で書く 撮影監督ストラーロ」がビデオ化された際に書いたビデオ評。
ビデオ発売時のパンフレット
「光で書く 撮影監督ストラーロ」
監督:デヴィッド・トンプソン
撮影:V.マラーノ、L.パレシ、M.マルケッティ 他
編集:N.パーカー
プロデューサー:L.ネグリ
制作:Happy Valley Films
出演:ヴィットリオ・ストラーロ、フランシス.F.コッポラ、
ベルナルド・ベルトルッチ、ウォレン・ベイティ 他
1992年/カラー/英国/60分
日本語版字幕:戸田奈津子
HiFi-mono/VHS
ダゲレオ出版
6180円
(以上 ビデオ評より)
イタリアを代表する撮影監督のひとりで、B・ベルトルッチ監督の「暗殺のオペラ(1969)」「暗殺の森(1970)」「ラストタンゴ・イン・パリ(1972)」「1900年(1975)」など、
F・F・コッポラ監督の「地獄の黙示録(1976/77)」「one from the heart (1981)」など、W・ベイティ監督の「レッズ(1981)」などの撮影監督をつとめたヴィットリオ・ストラーロですが、このドキュメンタリー作品「光で書く」より10年ほど遡る1983年、留学中のローマ大学で、10日間ほど昼夜連続でさまざまな映画上映と映画人講演会があり、彼の講演会もその中で開催され、聴きに行きました。
撮影監督(director of photography)ということばに、当時まだなじみがありませんでしたが、そのときの優雅な立振舞い、まるで即興詩のように色や光について語る彼に強烈な印象を受け、撮影監督という職業を耳にすると今でも真っ先に彼を思い浮かべます。
「色には意味がある。赤は愛情や情熱だ。青は理性だ。ピエロ・デッラ・フランチェスカの青を思い浮かべればいい。白は調和ある世界だ。」
「自然光と人工の光、それは物語であり、歴史なのだ。私は光と影をつくりだすのだ。」
僕がみた講演会ののちも、ベルトルッチとは「ラスト・エンペラー(1987)」「シェルタリング・スカイ(1990)」、コッポラとは「ニューヨーク・ストーリー(1989)」、ウォレン・ベイティとは「ディック・トレイシー(1989)」などの作品で協同し、こうした彼の姿勢はその後も変わることなく今日に至っていると思いますが、感覚的な映像にとどまらない、色や光に対する彼固有の強い意志、信念、映像そのものの物語性のようなものをとても強く感じます。